偽情報との戦い ― Civil Societyができること
https://www.youtube.com/watch?v=pVI3DIztcSk&list=PLHsuZp6_Tsv9NlzuJwDNqf7ezKkp6O9MU&index=3
Plurality Tokyo Namerakaigi #2
15:45-16:25 ​セッション3 偽情報との戦い ― Civil Society ができること
​Audrey Tang、川邊悠紀 (ryoma)、古田大輔、笹原 和俊。モデレーター: 桒原響子
登壇者
Audrey Tang(台湾元デジタル担当大臣)
川邊悠紀 (ryoma)(Code for Japan/シビックハッカー)
笹原 和俊(東京工業大学・計算社会科学)
古田大輔(Japan Fact-check Center 編集長)
モデレーター:桒原響子(日本国際問題研究所)
1. 台湾の最新プレイブック(Audrey)
脅威の定義
①ディスインフォ(false & harmful)だけでなく②外国情報操作(FIMI)全体を対象にする。
近年は “AIスウォーム” や極端意見の人工拡散が主流。
戦略① プレバンキング
事後の「デバンク」より、事前の“ワクチン”が効く。
中高カリキュラムに市民ファクトチェック実習を組込み、若年層を接種。
戦略② KYC+匿名性の両立
▶ SNS広告は全件デジタル署名+発信元確認を義務化(反詐欺重視で言論検閲と切り分け)
▶ 選択的開示付きデジタルIDで「人間かボットか」を保証しつつプライバシー保護。
狙い
検閲ではなく「文脈復元」――発信源・コミュニティ情報を添えて可視化し、陰謀論の余地を減らす。
2. 日本の現状と課題
2-1 川邊悠紀(Code for Japan)
オープンデータが欠かせない。市民ハッカーが分析・実験できるAPI提供をプラットフォームに求める。
まずは X Community Notes 分析ハッカソン を来月開催し、選挙データ利活用を模索。
2-2 笹原 和俊(計算社会科学)
AIファクトチェック提示のタイミングが鍵
動画視聴中の警告は共有意欲を低下させるが、視聴後では逆効果も。
同じ警告を連続で出すと効果が激減 → 介入設計が重要。
「検出AI」と同時に “どう見せるか” のUX研究 が不可欠。
2-3 古田大輔(J-FactCheck)
日本は8年遅れ
2016年のBrexit・アメリカ大統領選で世界は動いたが、日本メディアは対岸視。
→ 2023年都知事選・兵庫県知事選でようやく危機認識。
ファクトチェック体制が脆弱
認定団体は3つ、選挙期間中のチェック記事34本のみ。
国際連携
IFCNやアジア域内ネットワークで協働。台湾と共同セミナーを今夏開催予定。
日本の役割
アジア民主国のハブとなり、データ・人材・教育を供給すべき。
3. クロストークで見えた論点
データアクセス
研究者・シビックハッカーが合法に API/データを取得できる仕組みを。
→ Utahの“Digital Choice Act”のような法整備がヒント。
AI対策の限界
高精度検出だけでは不十分。
└ 市民が「文脈付き」で判断できるUI/教育が必要。
武器化される表現の自由
トランプ派はプラットフォーム規制を“検閲”と批判。
→ 「安全(詐欺防止)」「エピステミック・セキュリティ」を入口に合意形成を図るのが現実的。
日台協力の可能性
教材・ID技術・ハッカソン・ファクトチェック共同企画など、即実行できるテーマ多数。 |
4. まとめ ― 日本への提案
1. 法制度
広告KYC+選択的ID開示の導入で「人かボットか」を可視化。
研究・市民利用向けにSNS相互運用(フェディバース)を義務付ける。
2. 技術・研究
AI検出より**介入デザイン**(タイミング・頻度・表示方法)の実証を進める。
公開データ基盤を整え、Code for Japan などが迅速に実験できる環境を作る。
3. 教育・市民参加
中高にプレバンキング型ワークを導入し、生成AI時代の「作るファクトチェック」を体験させる。
地域メディア・図書館と連携し継続的なメディアリテラシー講座を。
4. 国際連携
台湾の実証済み施策(vTaiwan, Cofacts など)を日本の選挙・自治体に試験導入。
アジア・ファクトチェック連合を東京に誘致し、ハブ機能を強化。
キーメッセージ
ディスインフォ対策は「検閲 vs. 表現の自由」の二項対立ではない。
文脈を復元する技術・制度・教育を整え、市民が自ら判断できる環境を先回りで設計する
——これが日本に求められる次の一手である。